女王様の言うとおり
「なにもしてないだと!?」


ギャルの一人が握り拳を作り、振り上げる。


それを大西さんの顔面めがけて振り下ろそうとした瞬間、男が大西さんの前に出ていた。


肌を打つ乾いた音が体育館裏に響く。


ギャルは青ざめ、一歩あとずさる。


しかし男も大西さんも表情を変えなかった。


それはまるでマスクでもつけているようで、恐怖心をあおられる。


「なんで邪魔するんだよ!」


ギャルは負けじと叫ぶが、明らかに劣勢だ。


雰囲気ですでに負けていて、奏は泣きそうな表情でうつむいてしまった。


「……どうしてその子を庇うの?」


奏が震える声で彼氏に問う。


彼氏はなんの躊躇もなく答えた。


「女王様だからだ」


ざぁ……っと風が吹き抜けた。


女王様。


その言葉があたしの脳裏に焼き付くように刻まれる。
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