Bitter Sweet

嫉妬と独占欲

朝。


目を開けると、日差しがカーテンから入ってきて眩しい。


同時に頭痛が私を襲う。


「うぅ……あぁ、頭痛い……」


ベッドの側にある小さなテーブルの上に1枚の紙がある。


紙には


「咲良先生、だいぶ酔っているみたいなので水とかヨーグルトとか買っておきました、食べ物は冷蔵庫に入れておきました。二日酔い治してから学校来てくださいね。尾川 湊」


昨日なにがあったんだっけ…


居酒屋に行ってめっちゃ飲んで、酔ってタクシーに尾川先生と乗ったことは覚えてる。


そこからの記憶がない。


たぶん、尾川先生が私を家まで連れてきてくれて、食べ物も買ってきてくれたんだろう。


いくら副担任でも年上なのにまさか酔ってる姿を見られるとは…


確か年は、28歳ぐらいだったはず。


あー、尾川先生だけではなく、いろんな先生方に迷惑かけてしまった。


やっぱ飲み過ぎはよくない。


頭がめっちゃ痛いけど、忘れていた。


蓮斗のこと。


蓮斗は体育祭終わった後どうしたんだろう、真っ直ぐ自分のマンションに戻ったのかな?もしかしたら私のマンションに来てずっと待ってたとか?


でもそうしたら、蓮斗は泊まるはずだし。


いやいや、蓮斗が私のマンションにいたら尾川先生と鉢合わせなって完全にOUT。



たぶん連絡が来てるはず、スマホ…、スマホ見ないと。


不在着信、10件。


メールは2件だけだ。


全部蓮斗から。


「咲良ちゃん、明日から休みだから家に来てよ、俺今体育祭の打ち上げ終わった。」


それで電話10回も来て


「もしかして先生も打ち上げ?男の先生に変なことされないで。また明日連絡する。」


蓮斗、ちゃんと考えてくれてた。10回も来たのになんで気付かなかったんだろ…


あ、スマホの充電切れてたんだ。朝充電せずに出勤したからすぐ切れてしまってた。


でも、よかった、スマホの画面見られてたら完全に蓮斗との交際がバレてたし…


いろいろ偶然が重なってなんとかバレてないみたい。

メールとか電話の名前の部分、「蓮斗」じゃなくて代わりの名前にしておいた方が良さそう。


しかし、蓮斗には申し訳ない。昨日の何故か飲みたくなった謎の気分のせいで完全に蓮斗と会うことを忘れてた、今日会って謝らないと。


まず、頭痛いのを治さなきゃ。


頭痛薬飲んで、水飲んで、と。


しばらくベッドに横になろう。


横になっている間、電話が来た。


尾川先生だ。


「木崎先生、昨日かなり酔ってた様に見えたけど大丈夫?」


「えぇ、大丈夫です、本当に迷惑をかけてしまってすいません、わざわざ家まで送ってくれて、食べ物まで…」


「いいよ、これぐらい。二日酔いはなってない?」


「いや、頭は少し痛いですけどもう少しで治ると思うので!迷惑かけてすいません!!」


「謝らなくたっていいって笑、羽柴先生から聞いたけど、木崎先生お酒強いから酔ったことないのに初めて昨日酔ったんだね、でも体育祭で盛り上がったし、少し疲れもあって飲み過ぎもよくあるよ、俺も何回も泥酔したことあるから、気持ち分かるし」


「あ、ありがとうございます、電話まで」


「うん、じゃお大事にね」


「ありがとうございます」


本当にいい先生方に囲まれた。1学年は20代の教師も多くて悩み事とかを言いやすいし、理解もしてくれる。本当にありがたい。


あ、蓮斗に電話しよ。どうか怒られないように。


「蓮斗?」


「咲良ちゃん、昨日なんで電話出なかったの?」


「わざとじゃなくて昨日の朝スマホに充電するの忘れてて、学校いる時に切れちゃって…」


「ふ〜ん」


「蓮斗、どうしたの?」


「打ち上げ行ったんだね」


「え?」


「学校から家に真っ直ぐ帰れば充電するだろうから俺の電話出れるはずなのに、全く音沙汰なかったってことは打ち上げ行ったんだ。」


「そうだよ、1年の先生方と居酒屋に行ったの」


「市川先生もいたの?」


「そりゃね、1学年の先生だから」


「元カレと一緒に飲むの危ないと思わなかった?」


「え、なんで…」


「なんでだろうね、元カレと同じ職場にいること何故言わなかったの?」


「何故って、言ったら蓮斗は絶対に市川先生のこと目の敵にしそうだし、部活でも顧問の先生なんだから尚更言わなくてもいいかなって、それに元カレだから、過去のことだから、今とは全く関係ない」


「そうだね、俺今から咲良ちゃんの家に行ってもいい?」


まだ頭痛するけど、蓮斗が怒っているようだし、会って説明しなきゃ。


「いいよ、来て」


「覚悟してて」


ヤバいことになりそうです。
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