Bitter Sweet

さようなら

3月22日。離任式。


そして、蓮斗と別れる日。


もう部屋は解約して、荷物はもう新しいマンションに引っ越してある。


後は、最後の挨拶をするだけ。


ホームルームには尾川先生が行ってくれている。


髪を束ねて、白のブラウスに絵梨花からもらった桜色のズボンを履いてステージに上がる。


蓮斗がずっと私を見ている。


離任する先生は私を含め10名。


4番目に私が喋る番。


「木崎先生、お願いします」


教頭の一声で私はステージの真ん中に。


「木崎咲良です、2年間お世話になりました。初めてクラスを持って、うまくいかないこと、仕事の難しさ、どうやったら生徒と向き合って未来をサポートできるか、ずっと考えていました。やっぱり教師の仕事は大変です。でも、みんながどんな些細なことでも話してくれて私のことを頼ってくれてすごく嬉しかったしそれが私にとっては教師になれてよかったなと思える瞬間です。そのような時間をたくさんくれてありがとう。いつも課題は多いけどなんとかやって部活も頑張って当たり前にやるのが普通かもしれないし、それを求めていたことが多々あったけど、勉強と部活の両立は難しいんです、私は高校生の時には全くできなかったから、だからみなさんを見てみんなすごいと思ってました、これ本心です。みんなには高校生の時にあれやればよかった〜とか思わないでやりたいことあればたくさんやってください、そして友達とたくさん笑い合ってください、ずっとそう願っています、本当にありがとうございました!」


生徒たちや教師から湧き上がる拍手。


みんなにとっていい教師でいれたのかなと少し自分を肯定できた時だった。


チラッと蓮斗を見ると蓮斗はずっと私を見てた。でも私は見なかった、いや見ることが出来なかった。


そのままステージを降りて、離任する先生は体育館に出る。


離任式が終わり、尾川先生がくる。


「大丈夫だった?蓮斗」


「やっぱり暗い、なにも話さないし」


「そうですか、最後のホームルームに行きますか、挨拶が終わったら尾川先生に任せます。」


「木崎先生、いつでも相談していいんだからね」


「はい、そしてまた集まりましょう4人で」


「昨日、羽柴先生が4人のグループトークを作ってたからね、そこで話せるね」笑


「あぁ、そうでした」笑 


「それじゃ行こうか」


「はい」


蓮斗を見るのが怖い。でも1年間お世話になったクラスに挨拶をしないと、1年間で一回り大きくなったみんなに。
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