イケナイ王子様
だが、私は翔さんの彼女だ。


応援することは、どうしてもできない。


なにも言ってあげることもできない。


そう思ったとき、店員さんがやってきた。


「お待たせしました〜。


イチゴのショートケーキと紅茶になります。


ごゆっくりどうぞ」


もう来ちゃった。


呆然としている私を尻目に、ケーキと紅茶を持ってきてくれた、店員さんが去っていった。


目の前に、大好きなイチゴのショートケーキがある。


普通なら、テンションが上がってスマホで写真を撮るのに、その気になれない。


その原因は……。


「ミドリ……そんなに、翔くんが好きだなんて……」


「大好きだよ!


私、翔くんのこと、あきらめきれないよ!


ふたりとも応援してね!」


女性3人組だ。


彼女たちから目をそらして前に向き直り、ケーキを食べはじめたが、口の中が甘くなくて、いくら食べても満足できなかった。
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