イケナイ王子様
「はぁ……」


翔さん……どこにいるんだろう。


はっ。


まさか、家出したとか……⁉︎


い、嫌だ、そんなの!


私、ひとりは嫌だよ!


「ひとりは嫌だよ……!」


涙が出そうになるのをなんとかこらえて、玄関近くの廊下に座り込んだとき。


「ただいま」


ガチャッとドアが開く音がして、おそるおそる玄関のほうに視線を向ける。


そこにいたのは……。


「あれ?


あんた、そんなとこに座って、なにしてんの?」


「翔さん……」


翔さんだ。


翔さんの姿を視界にとらえた瞬間、私は、必要以上のまばたきをした。


だって、家にいなくて、家出したと思ってたから……。


「翔さん……どこに行ってたんですか?」


「夕飯の材料を買いにいってたんだよ。


料理担当の兄貴がいないし、冷蔵庫にたいした食材がなかったから」
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