イケナイ王子様
そ、そうだったのか。


私、悪い方向に考えすぎてたな……。


心の中でそうつぶやく私をスルーして、翔さんが、左手に持っているバッグを、私に向かって掲げた。


翔さんからバッグを受け取り、中身を確認すると、野菜や肉などの食材がたくさん入っていた。


本当に買いものに行っていたらしい。


キッチン近くのテーブルに置き、バッグの中身をひとつずつ取りだす。


と、突然。


「あんたさ、俺があんたに黙って、家出したかと思った?」


「へ……?」


な、なに、いきなり。


いきなり質問してこないでくださいよ。


しかも図星だし……。


「お、思ってませんよ。


この時間なら、夕ご飯に使う食材を買いにいってたんだなって思いましたよ」


「ふーん。


じゃあ、なんで俺が帰ってきたとき、廊下に座り込んでたんだよ」
< 120 / 623 >

この作品をシェア

pagetop