イケナイ王子様
「ちっとも大袈裟じゃないですよ。


私、料理したことありませんから」


「あぁ、そういやそうだっけ」


さも今思い出したかのように、スプーンを置いて、ポンッと手を叩く翔さん。


今のわざとでしょ。


わざと、思い出したかのような顔をしたんだ。


「翔さん、私が、料理したこと、ちゃんと覚えてましたよね」


「なーんだ、俺がわざと思い出したような顔してたってバレた?」


「そりゃあ、バレますよ」


いたずらっ子のように笑う翔さんに、苦笑いを見せる。


翔さんが嘘をつくことがあることは、両想いになる前にちゃんと勉強したもんね。


そう思いながら、食べるのを再開する。


私のキーマカレーの残りが、5分の1になったそのとき。


「……あのさ」


「な、なんですか?」


「……さっきの言葉、本当か?」
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