イケナイ王子様
私の背後に人の気配がする。


この家にいるのは、私の他にひとりしかいない。


「待てよ」


髪の毛を撫でる、心地よい吐息。


その直後に聞こえたのは、トンッという音。


それと同時に、私の横の壁に、手がつけられるのが見えた。


どうやら私は、背後から、翔さんに壁ドンされたみたいだ。


でも、いったいなんでこんなことを……。


くるっと体の向きを変え、翔さんの真正面に向き直る。


ドキッ。


翔さんの両目が、私をじっと見つめていて、思わずドキドキしてしまう。


これが正式な壁ドンか。


こんなことされたの、ひさしぶりだな。


って、今はそんなこと考えてる場合じゃない!


「な、なんですか?」


声がうわずっちゃった……。


いつになったら、声がうわずるクセが直るのかな。
< 131 / 623 >

この作品をシェア

pagetop