イケナイ王子様
絶対こう言われる……!


だから、お見合いの話は、翔さんには言わない。


その代わり、こう答えた。


「疑ってるって……私のこと、信じてないんですか?


私、本当になにも隠してませんよ。


それなのに、信じてくれないなんて……」


我ながら迫真の演技だと思う。


私は、嘘がつけない性格の持ち主らしいけど、演技はうまいとよく言われた。


体を震わせて、目から涙をこぼす。


涙は、止まることを知らないように、どんどんあふれていく。


しかし、その涙は簡単に止まった。


なぜなら、唇を噛みしめていた翔さんにキスされたから。


私の唇に、翔さんの唇のぬくもりが、しっかりと伝わってくる。


目を閉じることができずに硬直した私を尻目に、翔さんが唇を離す。
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