イケナイ王子様
どうやって、私のメアドを知ったのか聞きたいが、聞く勇気がない。


怖いから。


相手が、彼氏を狙う年上の女性なら、なおさら。


女の人の嫉妬ほど怖いものはないと、よく聞く。


しかし、その嫉妬が自分に向けられるとなると、ホラー小説を読んだあとよりも、寒気や恐怖が襲いかかってくる。


ぶるっ。


「寒……」


両腕をさすり、自分の体を抱きしめる。


メールを削除して、スマホを机の上に置く。


とにかく、ミドリさんからのメールは忘れようっと。


忘れないと、恐怖にさいなまれそうだし。


自室を出てリビングに向かう。


今は、夜の8時40分。


すでに夕ご飯は食べ終わっている。


それなのに、なぜリビングに向かうのか。


テレビを観て、ミドリさんから送られたメールを忘れるためだ。
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