イケナイ王子様
ミドリさんの告白をちゃんと断ってくれたし、『大好き』だと言ってくれたし。


この人を好きになって本当によかった、と思えるのだ。


「たとえ他の女に告白されても、俺の気持ちは絶対に変わらない。


俺の気持ちは、あんたにあるから」


翔さん……。


「……っ」


「愛海、好きだよ。


おやすみ」


涙を浮かべる私に再びキスしたあと、翔さんはやわらかな笑みを浮かべて、私の視界から姿を消した。


「……っ」


ズルいよ、翔さん。


こんなときに優しくしてくれるなんて。


もう、許すしかなくなっちゃうじゃん。


「翔さん……どれだけ私を夢中にさせたら気が済むんですか……」


そのつぶやきとともに、目に浮かべた涙が太ももに落ちた。


いびつな水玉と化した涙が、まるで私の複雑な心を表しているかのようだった。
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