イケナイ王子様
修羅場状態の翔さんに向かって言うが、よほど衝撃が大きかったのか、翔さんはなにも反応しない。


この反応……私の声が聞こえてるってことでいいのかな……?


まぁ、言いたいことは伝えたし、いいか。


「あ、愛海ちゃん、そのジュースは……」


出入り口に向かったと同時に、洋季さんの声が聞こえたけれど、スルーする。


ごめんなさい、翔さん。


私だけ逃げちゃうなんて。


でも、逃げるのは、突然起きた修羅場から逃れるためなんです。


どうか、許してください……。


心の中でそうつぶやき、ジュース入りのグラスを手に取る。


そして、気がつけば、階段の踊り場まで来ていた。


私が着いた階段の踊り場は、電気がついておらず、ほぼ真っ暗。
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