イケナイ王子様
あいつが、この近くにいるかもしれないと思うと、わけもなく安心してしまう。


と、そのとき。


「あれ……?」


誰もいないはずの階段に、女物の靴を見つけた。


ほぼ真っ暗なので、数メートルの場所から見てもわからないはず。


でも俺は、誰かがいるとわかった。


その証拠は、申しわけ程度につけられた蛍光灯。


その蛍光灯が、俺に存在を教えてくれたのだ。


にしても、誰の靴なんだ?


階段を上り、壁にある電気のスイッチをつける。


ほんの少しだけ明るかった階段が、まぶしく照らしだされた。


でも、近くに誰もいない。


こんなところに、無造作に靴を脱ぎ捨てるなんて……。


誰だか知らないけど、非常識なやつだな。


深いため息をつきたくなる。
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