イケナイ王子様
そんなこと知らねぇよ。


それに、婚約者だと……?


「だからな、愛海ちゃんから今すぐ……」


「離しません。


愛海は、俺の彼女なんで」


たとえ、藤堂の親父から、愛海から手を引けと言われても、絶対に引かない。


愛海は、俺がはじめて好きになった女だから。


「それに、手を引けっていうセリフは、こっちのものですよ。


先に、こいつと出会って付き合ったのは俺ですから」


藤堂が、愛海の婚約者だかなんだか知らないけど、そんな関係、俺は認めない。


「じゃあ、お先に失礼します。


東側の階段に空のワイングラスがあるので、回収してくれませんかね。


それでは」


「ち、ちょっと、君……!」


藤堂の親父が引き止めるのもかまわず、俺は愛海を抱きかかえたまま、会場を出る。


会場の外に出ると、冷たい風が俺の顔に当たった。
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