イケナイ王子様
嘘ついちゃってる私を、ちゃんと“彼女”だと言ってくれるなんて……。


私、泣きそうになるよ。


と、突然、紀野くんが耳打ちしてきた。


「……愛海ちゃん」


「へっ……な、なに?」


びっくりした。


いきなり耳打ちしてくるから、体が震えちゃったよ。


「黒いスーツ着たあの男、さっき“洋季様”って言ってなかった?」


「あぁ……そういえば言ってたね」


さっきまで気にしなかったけれど、あの男の人……洋季さんに仕えてる人なのかな。


「あの男が言ってた“洋季様”って、藤堂グループの息子の、藤堂洋季のことか?」


「うん、たぶん……」


というか、それしか当てはまらない。
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