イケナイ王子様
う、うわぁ……。


翔さん、本気で怒ってる……!


「それはこっちのセリフだよ。


俺も、君みたいに、俺の邪魔をする人間が大嫌いなんだよね」


「邪魔してるのはお前のほうだろ」


と、突然、洋季さんがこうつぶやいた。


「あーあ、これじゃあ、らちが明かないね。


だったら、今からあの子を呼ぶ?


来栖川グループの娘の愛海ちゃんを」


えっ⁉︎


まさか洋季さん……私に気づいてる⁉︎


ま、マズい!


翔さんと洋季さんが振り向かないうちに、そっと逃げなきゃ!


「紀野くん……私、帰るね。


急用を思い出して……」


「えっ……」


「じゃ、じゃあね!」


それだけ言って、翔さんと洋季さんがいる方向に背を向けて、走りだした。
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