イケナイ王子様
まるで、さみしそうに鳴く犬のように。


な、なんか、私が悪いことしたみたい。


べつにそんなわけじゃないのに……。


「し、心配しないでください!


嫌な出来事が起こる前みたいな顔しなくても、私は大丈夫ですよ!」


「…………」


「だ、だから、安心してください!


私は、悪い人に巻き込まれるようなことはしません!」


「…………」


「じ、じゃあ私、朝ご飯食べにいきます!」


無言でたたずむ翔さんの横を通り過ぎ、私はリビングに向かった。


朝ご飯を食べにいくのは嘘。


本当は、翔さんの悲しそうな顔を、これ以上見たくなくて、逃げただけ。


バカだな、私。


翔さんから逃げようとしたって、ムダなのに。
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