イケナイ王子様
叔母さん、ちょっと緊張してるのかな。


普段は明るくて、おしゃべりな叔母さんが、顔を強張らせるなんてめずらしい。


「叔母さん……?」


そっと、叔母さんのほうに顔を向けたそのとき。


こちらに向かって歩いてくる足音が聞こえてきて、思わず背筋を伸ばした。


だ、誰か来る!


その意識から、私は叔母さんから目をそらした。


そして。


「お待たせいたしました」


頭上に、男の人の声が降った。


私が顔をあげられずにいるのをスルーして、叔母さんが立ちあがる。


「いえいえ、待ってませんよ。


こちらも、今来たばかりなので」


とか言ってるけど……。


叔母さん、口調がぎこちないよ。


「どうぞ、こちらにお座りになってください」


叔母さんがそう言ったと同時に、男の人が叔母さんの向かい側に座る。
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