イケナイ王子様
そんなこと、今の私にはできないよ。


まぁ、我妻兄弟のうちの誰かなら、遊園地を貸し切り状態にさせることはできるかもしれないけど。


以前、遊園地に行ったとき、薫くんが貸し切り状態にしてほしいと言わなかったのは、人混みに紛れ込んだほうが、他の我妻兄弟に見つかるリスクが低いと判断したためだろう。


「じゃあ、行こうか」


「は、はい」


洋季さんが歩き、私が洋季さんのうしろ姿を追いかける。


歩きはじめてから、まだ1分もしないうちに、洋季さんがピタッと足を止めた。


あれ?


洋季さん、どうしたんだろう。


頭上に疑問符を浮かべたそのとき。


グイッ。


「……っ!」


ち、ちょっと洋季さん!


勝手に私の手を引っ張らないで!


そう、洋季さんが私の手を掴んで、自分の手とつないだのだ。
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