イケナイ王子様
ほ、本当だ……。


視線を上にあげたと同時に視界に入ったのは、薫くんと一緒に行った遊園地とまったく同じ場所。


小さいころに来たわけじゃないのに、なぜかなつかしさを感じる。


「愛海ちゃん?」


はっ。


洋季さんに声をかけられたことで、我に返り、洋季さんのほうに向き直る。


「ご、ごめんなさい!


以前、私と一緒に来た友達を思い出しちゃって……」


また“友達”って言っちゃったよ。


薫くんは友達じゃなくて、彼氏の弟なのに……。


「そうなの?」


「そうですよ!


以前、一緒に来た友達、もういなくなっちゃったので、もう二度とその友達と遊園地に行けないんだなと思うと、悲しくなっちゃって……」


あぁ、また嘘ついちゃった……。


嘘の上に、さらに嘘を重ねるなんて、私はなんてバカなんだろう。
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