イケナイ王子様
☆☆☆
「ふぅ……」
遊園地の中に入ってから数十分後。
『ちょっと、トイレに行ってくるね』
今から5分ほど前に、洋季さんがそう言ったので、今、私はメリーゴーラウンドの近くのベンチに座っている。
私が座っているベンチは、トイレとの距離が近いため、洋季さんが戻ってきたら、真っ先に私を見つけてくれるだろう。
しかし、洋季さん、遅いな……。
チラッと腕時計に目を向ける。
お腹が痛いのかな。
そう思い、腕時計から視線をはずしたそのとき。
「あれ?」
ん?
誰かが私を見てる?
そして、今の声は……。
「愛海?」
「……きーちゃん?」
視界に現れた、見覚えのある女の子。
中学時代の友達、弓屋 綺彩(ゆみや きいろ)。
あだ名は“きーちゃん”。