ノクターン
32
区役所に届出を出した私達は、横浜に向かっていた。
新しい戸籍ができるのは、年明けになるとの事で。
「色々な手続きは、来年だね。」
と智くんが言う。
「うん。でも、もう廣澤麻有子だよ。」
と言う私の手を握ってくれた。
お父様に頂いたお小遣いは 10万円も入っていて。
驚いて気後れする私に
「いいの。あげたいんだから。免税店でバッグでも買おうね。」
と智くんは言う。
「私、こんなにしてもらって。みんなに可愛がってもらって。いいのかな。」
「麻有ちゃんが すごく俺の事を 大切に思ってくれるから。それが みんなにわかるから。だから、みんな麻有ちゃんに 感謝しているんだよ。」
智くんの言葉に、私は 涙が滲んでしまう。
「もちろん、俺もね。麻有ちゃんの愛を 一番感じているのは俺だよ。こんなに愛されて 俺は最高に幸せだよ。」
智くんの思いは、そのまま私の思いで。
どうして二人は、こんなにも 同じなのだろう。
私は、感動で震えながら 涙を流した。