ノクターン
7
日曜日の午後、私は智くんのご両親に挨拶に行った。
1時半に渋谷駅まで 智くんが迎えに来てくれた。
「少し歩くからね。親父もおふくろも 楽しみにしているよ。麻有ちゃん、緊張しなくて大丈夫だから。」
ガチガチに緊張した私に 智くんは言う。
「無理よ。会社の面接より緊張している。」
そう言う私を、智くんは笑顔で見つめた。
10分少々で、智くんの家に着く。
渋谷区松濤の、閑静な住宅街の 想像以上の豪邸だった。
「うそ、こんな大きな家。やっぱり無理だよ。」
この期に及んで 私の腰は引ける。
「早く、おいで。」
智くんは微笑みながら 中に入って行く。
私は玄関までの長いアプローチを 深呼吸しながら付いて行く。