ノクターン
12
初台の駅前で、軽く食事をして 私達は松濤の家に向かった。
智くんは 大森のアパートまで、車で送ると言ってくれた。
「初台から大森までって、電車だと不便だからね。」
松濤までは、タクシーで10分とかからない。
智くんは 車だけ取って行こうと言ったけれど、私は きちんと挨拶がしたかった。
私を玄関に待たせて、智くんがお母様を呼びに行く。
「麻有ちゃん、一緒なの?」と言いながらお母様は出てきた。
「こんばんは。夜分に、突然すみません。」
私が言うと、
「ちょっと上がってよ、ね。もうすぐお父さんも帰って来るから。」
夜の9時過ぎで、突然なのに お母様は きちんとした服装で 化粧もしている。
こういう所なのだと思う。
愛され続ける努力。パートナーを尊重する気持ち。
働いているお父様を きちんとしてお迎えする事。
私も見習おうと、強く思った。