ノクターン
13
私のアパートから軽井沢までは、車で2時間少々。
高速道路は 土曜日でも混雑というほどの車もなく、スムーズに流れていく。
お昼少し前に 軽井沢インターを降りた。
南軽井沢で お蕎麦を食べて、1時頃に私の実家に着いた。
智くんは、きちんとスーツ姿で来てくれた。
店の前に車を停めると、音を聞きつけて 中から母が出てきた。
「ただいま。」
と私が言うと、母は ちょっと緊張したような よそゆきの声で
「麻有ちゃん、おかえり。さあ、入っていただいて。」と言う。
「ママ、智くんよ。そこの別荘の 廣澤智之さん。」私が 智くんを紹介する。
「えー、やだ。麻有ちゃんの結婚相手って あの智くんなの!」
母は、さっきまでの “ よそゆき ” を忘れて、素で驚きの声を出す。
「ちょっと、声 大きいって。中に入るわよ。」
智くんを促して お店の横の玄関から 家に入る。