ノクターン
14
「智くん、別荘の前を通ってくれる?」
車に乗って、私は言った。
「いいよ。」
私の家と別荘は、車なら5分とかからない。
それなのに、私は あれ以来ここに来たことがなかった。
「わあ、懐かしい。」
車を降りて 庭に入ってみる。
「ここから始まったんだね。」
智くんは 優しく肩を抱いてくれる。
「中に入ってみる?」
と言って智くんは 玄関ドアの横に置いてある 植木鉢をずらして鍵を出す。
「えー。不用心。」
と驚く私に 笑いかけて別荘の中に入っていく。