敏腕弁護士との政略結婚事情~遅ればせながら、溺愛開始といきましょう~
その上、父親が櫂斗に、自分との結婚を打診したと知れば……。
いくら彼女でも、自分の将来を父親に勝手に決められては、心穏やかでいられるはずがない。
「話は終わりました。三田村さんはお帰りですか?」
櫂斗は、とっさに笑みを浮かべた。
「はい。須藤先生、あの……」
「お気をつけて」
葵が呼びかけてくるのを遮って、その横を擦り抜ける。
「あ」
彼女が短い声を発して、振り返る気配を感じながら、自分の執務室に向かった。
この事務所では、所属する弁護士一人ひとりに、一室ずつ執務室が与えられている。
日中はアシスタントの出入りも多いが、この時間になれば確実に一人になれる。
櫂斗は執務室に入ると、しっかりと施錠して、脇目も振らずにデスクに足を向けた。
ゆったりしたチェアに、ドスッと腰を下ろす。
深く背を預け、チェアを軋ませながら、大きく天井を仰いだ。
そして。
「……ふっ」
薄く目を細め、吐息を漏らして微笑んだ。
自分が笑っていることに気付くと、笑いは沸々と込み上げてくる。
「ふっ。くくっ……ははっ……!」
シートから背を起こし、デスクに身体を折る勢いで、櫂斗はなんとも愉快げに笑い続けた。
いくら彼女でも、自分の将来を父親に勝手に決められては、心穏やかでいられるはずがない。
「話は終わりました。三田村さんはお帰りですか?」
櫂斗は、とっさに笑みを浮かべた。
「はい。須藤先生、あの……」
「お気をつけて」
葵が呼びかけてくるのを遮って、その横を擦り抜ける。
「あ」
彼女が短い声を発して、振り返る気配を感じながら、自分の執務室に向かった。
この事務所では、所属する弁護士一人ひとりに、一室ずつ執務室が与えられている。
日中はアシスタントの出入りも多いが、この時間になれば確実に一人になれる。
櫂斗は執務室に入ると、しっかりと施錠して、脇目も振らずにデスクに足を向けた。
ゆったりしたチェアに、ドスッと腰を下ろす。
深く背を預け、チェアを軋ませながら、大きく天井を仰いだ。
そして。
「……ふっ」
薄く目を細め、吐息を漏らして微笑んだ。
自分が笑っていることに気付くと、笑いは沸々と込み上げてくる。
「ふっ。くくっ……ははっ……!」
シートから背を起こし、デスクに身体を折る勢いで、櫂斗はなんとも愉快げに笑い続けた。