敏腕弁護士との政略結婚事情~遅ればせながら、溺愛開始といきましょう~
櫂斗は永田町駅から半蔵門線に乗り、大手町の駅で降りた。
帰宅のピークにはまだ早い、オフィス街の広い歩道を闊歩して、近代的な外観の高層インテリジェントビルに入る。
このビルの三十階に、彼がアソシエイト弁護士として勤める、三田村総合法律事務所のオフィスがある。
フロアに降り立つと、受付の女性から「お帰りなさい」と声をかけられた。
それには軽く応じながら、彼は自分の執務室ではなく、まっすぐ所長室に足を向けた。
「あ。お帰りなさい!」
ガラス張りで開放的な事務室前の廊下を通り過ぎようとした時、中から先ほどの電話の女性の声がした。
櫂斗が条件反射で足を止めると、ドア口から華奢な女性が出てきた。
清楚な紺色のセットアップ姿。
黒というよりはこげ茶色に近い長い髪はふんわりしていて、毛先が胸元で揺れている。
目尻が下がった、丸い大きな二重目蓋の目。
それほど高さはないものの、形のいい鼻。
大人しい性格を表す小さな口。
華やかさはないが、品があり整った顔立ちの事務員は、この法律事務所の所長の娘、三田村葵だ。
「あの、須藤先生。勝訴、おめでとうございま……」
「ありがとうございます。所長は、ご在室ですか?」
帰宅のピークにはまだ早い、オフィス街の広い歩道を闊歩して、近代的な外観の高層インテリジェントビルに入る。
このビルの三十階に、彼がアソシエイト弁護士として勤める、三田村総合法律事務所のオフィスがある。
フロアに降り立つと、受付の女性から「お帰りなさい」と声をかけられた。
それには軽く応じながら、彼は自分の執務室ではなく、まっすぐ所長室に足を向けた。
「あ。お帰りなさい!」
ガラス張りで開放的な事務室前の廊下を通り過ぎようとした時、中から先ほどの電話の女性の声がした。
櫂斗が条件反射で足を止めると、ドア口から華奢な女性が出てきた。
清楚な紺色のセットアップ姿。
黒というよりはこげ茶色に近い長い髪はふんわりしていて、毛先が胸元で揺れている。
目尻が下がった、丸い大きな二重目蓋の目。
それほど高さはないものの、形のいい鼻。
大人しい性格を表す小さな口。
華やかさはないが、品があり整った顔立ちの事務員は、この法律事務所の所長の娘、三田村葵だ。
「あの、須藤先生。勝訴、おめでとうございま……」
「ありがとうございます。所長は、ご在室ですか?」