敏腕弁護士との政略結婚事情~遅ればせながら、溺愛開始といきましょう~
所長も、コーヒーを一口含んでから、
「須藤君」
鷹揚に足を組み上げた。
「君はまだ若いが、弁護士としての資質を、私は高く評価している」
「……ありがとうございます」
口では礼を繰り返しながらも、櫂斗はふっと眉間の皺を深めた。
職業柄、相手の顔色や表情の変化から、心を読むのは得意だ。
しかし、今対面しているのは、弁護士としても人間としても、大きく櫂斗の上を行く男。
彼がなにを言わんとしているか、読心するのは容易ではない。
「所長。どんなご用件でしょうか」
心理戦で勝つのは諦めて、彼は真っ向から質問をぶつけた。
それには、やはり、まったく読めない薄い笑みが返ってくる。
「須藤君は、医療訴訟を多く手掛けているから、医師でなくても、診断書を読むのはお手のものかな」
所長は、彼が焦れているのを見透かしながら、飄々とうそぶき、ソファを軋ませて立ち上がる。
櫂斗が目で追う中、重厚な造りの執務机に回って、そこからなにか封筒を取り出した。
再び対面に戻ってくると、テーブル越しに無言で差し出してくる。
「……これは?」
櫂斗は訝し気に封筒を手に取り、短く問いかけた。
しかし、返事はない。
「須藤君」
鷹揚に足を組み上げた。
「君はまだ若いが、弁護士としての資質を、私は高く評価している」
「……ありがとうございます」
口では礼を繰り返しながらも、櫂斗はふっと眉間の皺を深めた。
職業柄、相手の顔色や表情の変化から、心を読むのは得意だ。
しかし、今対面しているのは、弁護士としても人間としても、大きく櫂斗の上を行く男。
彼がなにを言わんとしているか、読心するのは容易ではない。
「所長。どんなご用件でしょうか」
心理戦で勝つのは諦めて、彼は真っ向から質問をぶつけた。
それには、やはり、まったく読めない薄い笑みが返ってくる。
「須藤君は、医療訴訟を多く手掛けているから、医師でなくても、診断書を読むのはお手のものかな」
所長は、彼が焦れているのを見透かしながら、飄々とうそぶき、ソファを軋ませて立ち上がる。
櫂斗が目で追う中、重厚な造りの執務机に回って、そこからなにか封筒を取り出した。
再び対面に戻ってくると、テーブル越しに無言で差し出してくる。
「……これは?」
櫂斗は訝し気に封筒を手に取り、短く問いかけた。
しかし、返事はない。