屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




「 んじゃ、皆さん気をつけて!
またなあ!王子! 」


「 マサヤさん、またねーっ!! 」


「 ――… あ、あの…っ!!王子さん!」




扉が閉じかけた瞬間


それを抑え
一人 飛び出して来た影は、先程の女性


あずるはその呼びかけに
俺の脇から、ひょこりと顔を出す




「 は、はい…っ! 」




「 あ… あのっ…

――― マサヤを…

マサヤを助けてくれてありがとう! 」




一瞬キョトンとしたものの
満面の笑顔を向けるあずる


泣き出しそうな笑顔を返す
彼女のその左手には


マサヤさんとお揃いの
銀色の指輪が光っていた




「 お菓子 いっぱい! 」


「 大漁大漁〜!
アズルン、袋貰ったから
こっちに一緒に入れる? 」


「 うん! 」


「 ボウズ
何か一個くれ、腹減った 」




笑い声

夜道に響く たくさんの靴音




「 … アズ、あの人を 助けたの? 」


「 偶然だよ 」




ふいに ―――


"命は繋がっている"と
そんな言葉が 頭を過ぎる




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