屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 ――… 真木 」
「 ん 」
「 あずるを何故
見つける事が出来た…? 」
「 …ローグウェル一族は
事件後のアズルの足取りを
完全に消す行動に出たからな
現にアイツが運ばれた病院は
架空企業に買収された後、ビルになった
…野音の出演者リストなんて
アズルの存在を示す記述は一切ねえよ 」
「 ―――… 」
「 んで当時
オレ個人が依頼した探偵も
黒服の集団に襲われたり色々とあってさ
最終的にはどこの社も
一切動いてくれなくなっちまった
それで池上が単独、写真留学の名目で
コッソリ一人で、海を渡ったのが真相 」
「 ――…そうだったのか 」
「 まあでも、情けないコトに
全力でやったにも関わらず
あずるは全然見付からなかったんだわ
…そりゃそうだよな
聞けばその時期、アズルの奴は
深い森、大きなお城、ベットの中
そこまでアイツを運んだのも
ローグウェルの車、専用チャーター機…
当然、一般航空機の渡航リストに
残ってるハズもないわけだ 」
「 …ならどうして 」
「 ――― "水谷タカオ"情報だよ
アイツはガキの頃
ニューヨークで生まれ育ってる
… 親が女優してるから抜きに
色んなトコに、顔が利く
それでも、一年かかった
――― マンハッタンの酒場
ある"やんごとない身分の方に
座興を頼まれた、旅芸人一座
いばらの咲き誇る城の奥には
『眠り姫』がホントにいたんだ"って
真っ赤な顔した酔っ払いに
偶然、そんな与太話を聞くまでは 」