屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
高い位置からの陽射し
「 リュウジ、おはよー! 」
「 … おはよう あずる 」
ベットからの風景
逆光の中 振り返る笑顔
台所から、トントンと音をたてる
まな板の上 包丁の音
小さな歌声と 味噌汁の湯気
朝方、ランプを消してすぐ
灰谷がソファから起き出した時
横に寝ていたあずるがそっと
布団を抜け出したのは知ってる
寝間着を出してやったり
枕代わりのクッションを、整えてやったり
俺がいない方が
二人、話しやすいだろうと
灰谷の笑い声に安心し、瞼を閉じた
そして、一眠りした今
灰谷は 朝ごはんを待つ子供の様に
間を置いて運ばれて来る皿を覗いたり
また台所に戻って行くあずると
笑いあいながら、会話を交わしていて
――― マンションの入口
ぽつりとひとり
街灯の下で待っていた時の
張り詰めていた雰囲気が
心なしか だいぶ緩んでいる
「 ――― いただきます 」
「 … いただきます 」
「 どーぞ! めしあがれ! 」