屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 "彼は、君が迷惑なんだよ"
耳元でずっと、そう繰り返した ―――
体の痛みと
心が壊れそうな程の絶望の中
それを信じたくない幼い少女は
自らの記憶を、大切な想い出を守るように
深い深い、荊の檻の中へ隠したのです
そして…?
少女の心は眠りました" ―――
しかもこいつは唯一
最初から、ルウの行き先を知ってた
医者として、搬送に付き合ったから
だけど誰にも知らせなかった
… お前はおろか
真木や池上も必死になって
捜しているのを知っていたのにね …」
「 ――― 梅川さん…? 」
「 本当だよ 」
金網から引き下ろされて
周りの手を、ただ静かに拒みながら
自らハンカチで、太腿の付け根を縛る
「 何故…? 」
「 ――― 僕が言ったじゃないか
"人のコンパスを狂わせる人間が
この世の中には居る"…って… 」