屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




「 ――… あの拳銃は
梅川さんの物だったんですか? 」


「 出処は知らんがね

それで一晩中あちらこちら
逃げ込みそうな場所、虱潰しに
人を出して捜し回ってたんだが…


昔の絡みで
足、向けづらい所もあってな


ほとほと困って ―――

時間的には朝方だったか
竹田が一本、誰かに電話入れてさ




――― そしたら…

梅川の奴は、ずっと二人のところ
青山君とあずるちゃんの所に
泊まってたみたいだなって


なんだそりゃあって、本気で驚いたよ


そもそも考えてみな


幾ら親しい間柄とはいえ
"新婚さん同然の若い子ん家に
家庭も仕事も、全てほっぽらかして
ずっと入り浸りのおじさん"


奇妙な話だろう?




連絡もついてないのに
失礼かと思ったんだが


――― 何しろ、モノがモノだしな


梅川が、何考えてるかも判らないし


逃げ込む先が無くなったら
ここに来るかもしれないって
急いでこっちに向かって来たんだ 」




「 水谷と…竹田さんは
知り合いだったんですね 」


「 ミズタニってのは
拳銃、取り上げてくれた男か?


俺はその辺も、よく知らないんだよ


でも朝方
竹田が連絡したのは、彼にだと思う




――― さ


俺が知ってるのは、これくらいだ
茶も馳走になったし、お暇するわ


青山君も、少し眠れよ?
下にいるから、何かあったら声かけてな 」


「 ありがとうございます 」





< 189 / 234 >

この作品をシェア

pagetop