屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
シチューの鍋は、綺麗に空
竜田揚げは
あずるが食べなかった分が残り
その小皿の分と同じくらい
自分達の腹も膨れた
「 …アズ、美味かった
食い過ぎて目眩がする… 」
「 あははは 」
「 あずる、後片付けはいい 」
「 え…でも 」
「 灰谷、やるぞ 」
あずるをベットに座らせてから
煙草をくわえ、腕まくりしていると
横になり、反り返っていたソファから
灰谷は、長い手足を起こした
「 洗うから拭いてくれ 」
「 うん 」
オレンジの香りと泡
水音
あずるは少しの間、俺達の方を見て
足をぷらぷらさせていたが
滞りなく事が運んでいるとわかると
例の水族館のチラシを開いて
楽しそうに、じっと眺めている
「 …ねえ青山さん、アズさ
クリオネが、実は怖いの知ってるのかな 」
「 え? 」
「 …透明な体と、小さな翼足
"流氷の天使"とか呼ばれてるけど
消化器官と生殖器官のみの巻き貝で
割れた頭から、触手を出して餌を捕る
…まるでクリーチャーだよ 」
「 知ってるだろ
深海生物とかも好きだし 」
「 …女ってギャーギャー言う癖に
お化け屋敷とか好きだよね 」
「 経験あんのか? 」
「 …中ニの時、クラスの女と行った 」
ボソリとした言い方が
子供の様でおかしい
「 手、繋がれたろ 」
「 … 抱き着かれて
流れで帰り、そいつん家でヤッた 」
今 サラっと、凄い事を聞いた気がする