屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 えー えー ぇー 」
灰谷は、顎を傾げ
電気シェーバーでヒゲを剃りながら
携帯をチェックし
あずるも、濁音を叫んではいるが
台所に急いで、朝飯を用意している
「 トオヤ
学校、何時ごろにおわるの? 」
「 昨日言ってた実験が
遅くなると八時位までかかるんだ
俺が大学変えたせいで
バンド暫く、オフ状態にさせるし
行ける時にはきちんと行くよ
今日まででしょ?クリオネ展示 」
「 そうだけど… 」
「 …気とか、使ったんじゃないからさ
二人で楽しんで来て
じゃあ、行ってきます 」
「 灰谷、学校まで車で送ろうか 」
「 新宿駅で、友達と待ち合わせしてる 」
「 あ!待って!これ!」
「 …あ 」
あずるの手には
タッパーに入った飯と
もうひとつ
「 昨日の竜田揚げと玉子焼きだけど… 」
「 …ありがとう 嬉しい 」
「 気をつけて行ってきてね!」
「 うん 」
晴れて、高い空
二人、屋上から 灰谷を見送り
灰谷もジーンズに手を入れながら
上を向いて、柔らかく笑う
そのまま前を向き、携帯を取り出して
何か話している様子で歩いて行った
「 あずる、俺達も飯食おう 」
「 はい 」