屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
アズライトの 青い雫を辿り
耳元で 名前を囁くと
返って来るのは
言葉にならない吐息
髪 ―――
鼻にキスすると
くすぐったそうに
俺の腕にしがみつきながら
クスクスと笑う
――― あずるに
"迎えに行く"と告げ
合鍵を渡したのは、今年の春
そして、秋
久しぶりの、長いオフに入る
まず、洗濯をしようと
カゴを持ち、ドアを開けたら
あずるがそこに 立っていて ―――
『 お天気いいから、来ちゃった!
――… お…怒ってる…? 』
怒るわけが無い ―――
立ち上がって、両手を拡げた途端
走り込んで来た 満面の微笑みを
青空の下で、思いきり抱きしめた
そして ―――
長い 長い キスの後
19のあの頃よりは
優しく出来たと思うけど
あずるもかなり、大人になったから
… 少し、無茶をした
今
腕の中で
小さなクシャミ
右腕に白い体を抱えたまま
背もたれ向こうに、左腕を延ばす
ベットの角に
追い寄せられたままの毛布を
一枚取って
自分ごと、その体を包む
「 … リュウジ あったかーい 」
「 もっと こっち来い 」
「 … うん 」
「 … もっと 」
「 ―――… うん 」