屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 急にごめんね〜
いい秋刀魚が手に入ったものだから
おすそ分けしようと思ってさあ 」
「 先生ありがとう!
今焼く?ビールあるよ! 」
「 おおお!
… というか、この家にビール?
青山くんもあずるちゃんも飲まないだろ 」
「 トオヤがビール好きだから 」
「 なるほど
… って、灰谷くんも泊まってるの?!」
「 うん! 」
「 … 同棲し始めのカップルの家に
特攻して来るとはなんちゅ〜… 」
「 あはは!
リュウジも食べるよね? 」
「 もちろん 」
「―― あ!あずるちゃん
ここ、七輪あったっけ? 」
「 うん! あるよ!」
空にも
網の上にも、秋刀魚
「 あぶらとけむり すごい 」
「 旬だからね〜
ここは窓ひとつだし、外で焼いて正解!
――― そうだ!
袋に大根があるんだけど
あずるちゃん、用意お願い出来るかい?」
「 はい!」
あずるは部屋へ戻り
俺と梅川さんは
木箱を出して、見張り番
「 … しかし〜
やっと一緒に暮らし始めて
ろくに物なんて食べてないだろうって
皆、心配してたんだけど…
なんか、全然立派に生活してて驚いた 」
「 飯は かなり食ってますよ 」
「 あずるちゃん
元々食が細いから
何度か抜くと、すぐ痩せちゃうものね
でも青山くんは
あずるちゃんを一番知ってるから…
心配いらなかったかな 」
「 いえ 気に留めて頂いて
――― いつも先生には感謝してます 」
「 うおっ! 頭なんか下げるなよ〜
… まあ正直言えば
僕が君達に会いたかったんだけどね 」
丸眼鏡に
人を安心させる、独特の声
竹田さんに助けられて
あずるを診てもらった医者
若くして 卓越していたが故に
長い間、裏社会に追いやられていた人
「 それとね
今日はひとつ
青山くんに聞きたい事が
あってやって来たんだ 」
「 はい 」