屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 当日彼女は
…その前からだったかな
コンパニオンか、アイドルの様な姿で
新宿駅前で色々な人に
アンケートと称して声をかけていて…
それでその日は、新都知事誕生と
新都庁完成のパレードがあって
かなりの賑わいになってたんだ
街路樹にも看板やら取り付けられてて
それに使用したと思われる細いロープが
首にしっかり巻き付いていた 」
「 …確かに、奇妙ですね 」
「 だろう?
あんな目立つ場所で、発見が遅れたのは
ロープが重みで切れて落下
生け垣に隠れてしまったかららしいけど」
「 …いえ、そっちではなくて 」
「 え?」
「 俺の中のイメージでは
彼女は自死やそういう行為と
かなり掛け離れているものですから
… でも、彼女は 」
「 あの頃は
…青山くんの状態も
あまり良い物ではなかったから
黙っていたけどね
彼女の心云々は
弁護士が捏造った後付けだよ 」
「 ――… 後付け?」
「 昔からある手だよ
いざ訴えられた時に無罪になるように
前に話したかもしれないけど
野音での事は、君や皆のせいじゃ無い
彼女が人を傷つけたりする行為は
あずるちゃんが初めてじゃないんだ
…それ以前にも
以降も、隣人の女の子を
一人、金づちで殴ったりしてる 」
「 …―― そ 」