屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 …稀にね
普通では理解出来ない
彼女のような人はいるんだよ
人の形はしていても
人の痛みに対して、何の予測も出来ない
心を持たない人間
教育とか環境とか
誰かに教えられるとかが全く影響しない
…生まれながらの心の異形者
だから僕自身も…
彼女が何かに思い悩んで
自殺するとは、到底思えないし… 」
「 さっきの質問は、何故俺に? 」
「 …当日、夕方の駅前で
彼女が最後に接触したらしき人間が
"黒っぽいキャップを被った
背の高い男"だったらしいんだ
…それを知った竹田さんが
"一応ちょっと、聞いて来い"ってね 」
「 竹田さんが… 」
「 ――― 君は、愛情が深いから
まあでも
背の高い男なんていうのは
見た人間の主観だし
それにこれはもう
自殺として処理された事なんだ ―― 」
「 先生ー!大根おろし出来たよー! 」
「 ――― お〜!ありがとう〜!
…あずるちゃんが戻って来て
こんなめでたい時に
突然こんな話して、悪かったね 」
「 いえ
―― 焦げますよ、梅川さん 」
「 …ぅあっとぉ!やばい!! 」
今更 こんな形で
その名前を聞くとは思っていなかった
だから、驚いただけだ