屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 ありがとうございました〜 」
やって来たのは鎌倉
移動の足は、レンタカー
一度も入った事の無い店で借りた
サーファーショップや土産物屋
個人商店が軒を連ねる中の
小さな輸入雑貨屋で
あずるのコートやカバンを選ぶ
「 じゃあ次は念願の、水族館へ行こう 」
「 ヤッターー!!」
後部席には、灰谷と梅川さん
助手席にあずる
道沿いにはガードレール
松と砂浜
光が反射した海
緑色の電車が、並んで走る
「 ねえねえあれ見て!鷹?!」
「 …アズ、あれは鳶 」
「 トンビ? 」
「 …似てるけどね
水族館の近く行けば、沢山いるかも 」
その羽根の行き先を追って
空を見上げる、生き生きとした碧い目
舞い上がる髪
――― "ローグウェルの愛人一族"
"画面の向こうの誰か"
"自分を狙う、何か"の可能性や
今まで出会った人達、その愛情
全ての状況がわかっていて
あずるはここに
俺の傍に戻る事を選んだのなら ―――
「 キャー!イルカの水跳ねたーー!! 」
「 ――… すげえ! 」
それならあずる
色々な場所へ 一緒に行こう
「 リュウジ!
次はクラゲに会いたい! 」
「 震えてる
一回、暖まってからな 」
―――― 空
澄んだ風の冷たさ
暖かい日だまり
二人一緒に 手を繋いで
「 リュウジー!鷹じゃなかったー!!」