屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




食事を終えて
クラゲの大水槽を見た


これだけの規模の物は
この場所にしかないらしく


「 ―… ずっとね、来てみたかったの 」




帰りは入口近くの
やはり込み入った、土産物店に寄る




「 …み、みんなかわいい… 」


かなり時間をかけて
あずるがまず仲間に選んだのは
透明で、つるつるとした素材の
ピンクとブルー、クラゲの置物


そして、シロクマのぬいぐるみと
かなり大きい、イルカの抱き枕も




「 …ぬいぐるみとか、全部同じじゃん 」


からかう様に、声をかける灰谷に
あずるは、頬を膨らませて答える


「 違うのー!
ぜんっぜん、違うんだよー 」


「 …わかってるよ 」


灰谷が笑い
あずるもにんまりと笑う




レジに並び、包装して貰っていると
後三十分で閉館を知らせるアナウンス


外から入る光も
濃いオレンジ色に変わっている




「 そろそろ出て、海見て帰るか 」


「 はい 」


「 … あ!ねねね皆!
あれ!作って行こうよ! 」




梅川さんが指差したのは
記念コインの作成機


ガラス部分には
様々なデザインが並べられていて
その中から好きな物を選び


手元、ボタン式のキーで
記入したい文字を、色々打ち込める




「 おー!日付も名前も入るんだ? 」


「 柄なににしようか!小銭あるかな〜 」


「 待って待って先生!
さっきレジでねーお釣りもらったのが… 」




笑いあう二人の後ろに立ち
様子を覗き込んでいると


つい と誰かに
背中を触られた気配がした


振り返ると




「 ――… 灰谷? 」




少しその場から引き離され
固い表情に手渡されたのは
テープの着いた、一枚のチラシ


「 … 今見たら
貴方の背中に貼ってあった 」




チラシの裏


白紙部分に 殴り書きされていたのは
シーツにあった 赤い文字と 同じ






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