屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




帰宅途中、スーパーに寄った


レンタカーを返し
新宿駅からは徒歩




「 …アズ、待って 」


「 ――― うん、メール? 」


「 … そう 」




マンション前で 携帯を弄る灰谷
中の監視カメラと、連動しているらしい


「 …いいよ 」




エレベーターに乗り
静かな廊下を通り、事務所


扉を開けて、階段を昇った




ごお と、風が空気を動かして
拡がる夜景は、いつも通りの屋上


紺色に煙る 夜空の下
張り巡らせたロープが、低く唸る




「 あずる
あそこから梅川さんと一緒に
木箱何個か、持って来て貰えるか? 」


「 うん!!」




誰かが隠れられる様な
シートの山は崩してある


この隙に鍵を開けて
部屋の中を、くまなくチェック




「 …青山さん 」


「 ん? 」


「 …真木さんや皆に
連絡取るべきなんじゃないの

――― 風呂場、異常無し 」




携帯


俺が標的という核心を持って

――― 真木に預ける事も考える



けれど
それをしたらあずるは
俺が『自分を捨てた』と思うだろう




「 … 青山さんがしないなら
俺が勝手に連絡するよ 」


「 あいつ今、忙しいだろう 」


「 …貴方すぐ 自分一人で抱え込むから
こういう時は、頼むって言われてる 」


「 真木も、似たようなもんだ 」


「 … ねえ
俺は貴方も大切なんだ
――― わかってる…? 」


「 黙ってやられるつもりは無いよ 」


「 …… 」




事件直後は


"あずると一緒に死にたい"

"あの子を守って死ねたなら
どうなっても構わなかったのに"


そう考えていた




だけど今は、一緒に生きたい




周りから 退屈と言われる生活でいい


ただ あずると二人で





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