屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
覚えのない名前
少し、声が低くなったのが
自分でもわかって ―――
慌てて表情を緩め、あずるの顔を見た
「 あ、えと…
昔、一度だけ、クウヤとカイヘーも一緒に
駅前の、中華料理屋さんで会ったよ 」
記憶を辿る
「 ――… ああ、名刺の
ビール、奢ってくれた人か…! 」
「 うんっ! あ 」
あずるはにこっと笑って
「 今度は、オミヨさんから 」
碧い視線を携帯に戻すとすぐに
眠る周りを気遣いながらも
楽しそうな会話が、しばらく続いた
「 うん、聞いてみる
―― リュウジ 」
「 ん? 」
「 あのね、二丁目合同で
ハロウィンパーティーやってるんだって
マサヤさんからのメールも、同じお誘い
カレシさんも一緒にって 」
「 いいよ、行こう 」
「 ―― え…いいの?! 」
「 いいもなにも
…そんなキラキラした顔されて
駄目って言えないだろ 」
「 あはは!リュウジ大好き!! 」
抱き着かれて、頬にキス
「 行っていいってー!
え…別にいちゃついてないよー
好きなんだからしょうがな…え
えええええええ?! 」
丸聞こえの会話と様子を
早速からかわれているらしい
真っ赤になっている顔、頭を撫でる
煙草を持ち、屋上に出て
月夜の下 一服する事にした