キスして、ねぇダーリン?
「菜々美は可愛いわよ。去年は学祭のミスコンで二位だったじゃない! 学内でも結構人気なのよ?」
いや、それ一位だったあなたに言われてもねぇとジト目で見ると、美樹は私にサクッと言う。
「いや、私とは系統違うけれど菜々美は可愛いの。保護欲をくすぐるっていうの?可愛い系ならではだよ」
そうか、だからかなぁ。
私に彼が手を出さないのは。
私だってもう二十一だし、彼は三十。
いい大人なのに、お泊りもしない、キスもない。
そんなんで付き合ってるって言えるのかな?
私は彼に触れたいし、触れてほしい。
好きだから……。
でも、それがないってことは彼はそうは思っていないということで……。
いけいけ、押せ押せでお付き合いまで持ち込んだのも私だし。
あぁ、やっぱり無謀だったのかな……。
私は口から零れるため息を止めることが出来ない。
「あんなに押せ押せでお付き合いし始めたのに。それならまた、菜々美から頑張ってみればいいじゃない?」
「それが出来たら苦労してない!! 私には人生初の彼氏なんだもん! お付き合いまではどうにかなっても、その先は未知すぎて、どうにもできないんだもん……」
そう、私はこれまでお付き合いはしたことがなかった。
好きだと思う人もいなかったし、告白されても好きでもない人とは付き合えないとお断りしてきたから。
今の彼氏が初めて好きになった人で、だからこそ諦められなくって押しまくって、ようやく応えてもらった感じだ。
「九つも下だと、二十歳超えててもお子ちゃまにしか見えないのかな……。私は、こんなに好きなのに……」
ブスッとテーブルに突っ伏して言えば、背後から来た男性の忍び笑いが聞こえてきて私は振り返った。
「あぁ、先輩聞いてたの? 美樹ちゃんのお迎えでしょ? どーぞ」
背後に来たのは美樹の彼氏で、私と美樹の所属サークルの先輩でもある智也先輩。
「うん、今日はもう終わりだからね。美樹と課題でもしつつ、一緒にご飯にしようって話してたから迎えに来たんだけど……」
そう言いつつ、話を背後から聞いていたのか先輩は笑いが堪えられなくなってきたらしい。