キスして、ねぇダーリン?
「なんでそこで笑えますかね、智也先輩」
私が不機嫌を隠さずに言えば、先輩は笑いすぎて流した涙を拭いつつ言った。
「うん、なんか二人は言葉が足りないなって。はたから見てると良くわかるのになと思って。これは俺はどっちに援護射撃をかけるべきか、悩んでいるよ」
なんだか、面白そうにしているのが私には気に食わなくってキッと睨む。
しかし、百五十二センチ小動物系では睨みも決まらないというものです。
「孝明兄さんも、なかなかだね。今回の場合は、菜々美ちゃんがまた押す方が早く解決すると思うよ?」
そう、私の彼氏の孝明さんと智也先輩は従兄弟。
そんな繋がりで知り合って、私は彼に恋をしてひたすら追いかけてやっとお付き合いとなった。
私と孝明さんの経緯を知る智也先輩と美樹はニコニコとしつつ言った。
「菜々美が一言。キスして?ってな感じで甘えて言えばイチコロよ!」
だから、それが出来たら苦労してないってのよ!!
とは思いつつ、これはでも試してみる価値あり?と考え始めた私の前でカップル二人は囁き合う。
「智くん、これは報告よ!この機会を逃すと、せっかくお付き合いできたのに菜々美に振られますよ?って言っておかないと」
「そうだよな。実は悩んでたけど菜々美ちゃんに一目惚れしてて、年の差に悩んでただけでかなり惚れ込んでるなんて知らないもんな、菜々美ちゃんは」
「そうよ! ってか、孝明さんヘタレ過ぎない?」
「それは否定しないけど、可愛くて仕方ないから暴走して嫌われるのを恐れてのヘタレかな?」
「それで彼女を悩ませてたら意味ないよ?」
「ごもっともです。兄さんにメールしておく」
こうして、あれこれ悩んでいたものの智也先輩と美樹の助言を受けて、これで砕けたら諦めようという、なんとも後ろ向きな意気込みで私は二人の案を決行する事にした。