密室でふたり、イケナイコト。
「うわぁ…人、多いっ……」
電車に乗った瞬間、あまりの人の多さにお互い顔をしかめた。
いつもはもう少し遅い時間だから、座れるけれど、今日は無理そう………
「大丈夫か?つらかったら言えよ?」
「だ、大丈夫……っ」
大丈夫だけど、厳密に言えば…全然大丈夫じゃない。
むしろ、心臓がヤバいデス……
ドア付近にいた方が降りやすいという成宮の薦めで、その通りにしたはいいんだけど……ドアと成宮の体に挟まれてる。
まさに壁ドン状態。
わたしのことを思って配慮してくれるのはありがたいけど、これはまた別もの。
目の前にはネクタイと、綺麗な鎖骨が見え隠れしてる。
なに、これ……
こんなの、ただの変態みたいじゃんっ…
気にしない、気にしない……
目のやり場に困って思わず俯くと、成宮が頭上でふっと笑った。
「さっきから、俺のこと見すぎ」
「なっ…!?
べ、別に見てないし……っ!!」
ば、バレてる……っ!?
「嘘つけ。さっきから熱い視線、ビシビシ感じたけど?」
「っ!?」
だから、そんな嬉しそうに笑わないでよっ……
調子狂うから……
そう思った瞬間。
カーブに入ったのか、電車がガタンッと大きく横に揺れた。