密室でふたり、イケナイコト。
気づいたら、全力で走り出していた。
ドサッと、袋が手から滑り落ちてしまったことで、2人に気づかれたんじゃないかと、怖くなって。
わたしが見ていたことを知られたんじゃないかって。
ちがう、ちがう……っ
そんなの、ただの言い訳。
本当は、つらかっただけ。
一秒でも早く、あの場からいなくなりたかっただけ。
見たくなかったっ……
────2人がキス、してるところなんて。
成宮の肩に手を置いた春名ちゃんがグッと顔の距離を縮めて、重なった影。
その光景を再び思い出した瞬間、頬に冷たいものが伝った。
あれ、今雨なんて降っていないはず……
今日は一日晴れだって天気予報でも言ってたのに。
そっか。
─────わたし、泣いてるんだ……
それが分かった瞬間、心の中でストンと何かかが落ちて途端に涙があふれてきた。
ああ、そうか。
全然、難しいことじゃなかった。
簡単なことだった。
何を深く考えていたんだろう。
恋なんて、一言でこうだって言えるわけじゃないってこと。
ただその人のことを考えるだけで心の中で、自分でも驚くような気持ちがたくさん生まれること。
その人との時間が恥ずかしくてなんだかくすぐったいけれど、それ以上に、とても幸せなこと。
その人が笑うたびに自分も嬉しくなること。
ああ、どうして気づかなかったのかな……