密室でふたり、イケナイコト。


「ひどい顔ね?」

「なんで……」


次の日の日曜日。

今日も収録でスタジオに来ていたわたし。

家に帰ってからもずっと泣いていたせいで、朝起きたら顔がパンパンに腫れていて。

来る前に濡れたタオルで目を冷やしていたけど、元には戻らず……

結局、尊人さんやスタッフさん、他の声優さんにまで、心配をかけてしまった。


昨日のことを思い出して、また気持ちが落ち込んでの繰り返し。

そのせいで、いつもはしないようなミスまで連発してしまった。

「今日は早く帰って休みな?」

「本当に、すみませんでした……」

たくさんの人に迷惑をかける始末。

あーあ、何やってるんだろう、わたし……


ズーンと落ち込んだまま外に出て、マスクをつけようとした瞬間。

今一番聞きたくなかった声に、思わず顔をしかめてしまった。


「春名、ちゃん……」


壁に寄り掛かるように立っていた人物は誰かを待っていたかのようで。

成宮に、会いに来たのかな……

今日はここにいないことくらい、本人から聞いてそうなのに。


ふっと笑ったその表情に、明らかに見下されているように感じて、心の中にもやもやと嫌なものが広がっていく。

今、春名ちゃんと話したくないのに……

何、言いにきたの?


「あいにくだけど、成宮は……」


休みだよ、そう言いかけて春名ちゃんの前を通り過ぎようとすると

「昨日、見てたでしょ?」

「っ!!」

被せられるように言われた言葉に、思わず帰ろうとした足をピタッと止めてしまった。

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