密室でふたり、イケナイコト。
気づいたら、周りに響くくらいの大きな声で叫んでいた。

我慢、できなかった。

もう、聞いていたくなかった。

今日は日曜。

いつもなら人通りが激しい通りも、今日はほとんどいない。


それだけが唯一の救いだったのに、

神様は本当に意地悪だ。


「へぇ……、ゆずきちゃんが “ 月城ゆき ”ってのは本当だったんだ?」

「っ!!」

自分を見失ってしまって、思わず出た声は素のもの。

つまりは、わたしの“ 月城 ゆき ”としての声で。

みるみるうちに、自分の顔が真っ青になっていくのが分かる。

今思えば、わたしの正体を知っていたとして、今日ここにいることはどうして……

ここで収録してるだなんて、一般人が知るわけない。

まさか……成、宮?


このことを知ってて、春名ちゃんに教える人なんて、考える限り成宮しか思いつかない。


いや、違う。

成宮がそんなことするはずがない。りみっちにだって、はーちゃんにだって、学校の誰にも教えてないはずなのに。

でも、待って……

わたし……100%そう、言いきれる?

彼女はわたしのはずなのに、春名ちゃんとキスして、挙句の果てには……


「まあ、いいや。
それより、これが最後の忠告だから」


「………」


「瑞稀と、別れてよね」


いつもの可愛く透き通るような声はどこに行ってしまったの?というくらいの低い声で。

春名ちゃんが去った後も、わたしの頭の中には、


“ 別れる ”


その言葉しか残っていなかった。

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